ネットストーカーに当たる行為・動機・ネットストーカー対処法まとめ

ネットストーカー(サイバーストーカー)とは、インターネットを介した連続的ないやがらせのことを指す総称を言います。法的な概念ではありませんし、公式な用語ではありませんが、おおよそのイメージは尽きやすいかと思います。

ネットストーカー行為そのものを明確に定義して、これを取り締まる法律はありませんので、既存の法律(ストーカー規制法等)を柔軟に解釈して対応しているのが実情のようです。そのため、まだまだ法律に穴はありますが、SNSやブログに対する連続したメッセージの送信が自主規制対象に追加され、少しずつネットストーカーに対する社会の見方も変わってきているようです。

とはいえ、ターゲットにされないことが第一ですので、ネットストーカー被害に遭わないために私達が知っておくべきことはなんでしょうか?

この記事では、ネットストーカーの方法・被害内容・対処方法についてご紹介させていただきます。

ネットストーカーの主な行為について

本来なら、行為そのもののことをネットストーキングやサイバーストーキングと呼び、ネットストーカーという言葉自体はストーカー行為をする人のことを指しますが、日本人的には人も行為もストーカーと言ってしまう傾向にあるようです。

イマイチまとまりの無い言葉ですが、大雑把に言えば、「悪意の有無に関わらずネット上及びネット関連の機器を利用し相手を不快にさせる行為」といったところです。

具体的にネットストーカーの行為をあげると、インターネット上(SNS上)における

  • つきまとい・監視行為
  • 誹謗中傷
  • 噂を広める
  • 個人情報や性的嗜好の暴露
  • ウイルス感染させる
  • データを破損させる など

嫌がらせ行為全般を意味するものですが、詳しくご紹介していきます。

つきまとい

つきまといはブログやSNSアカウントにコメント・メッセージを送りつけ、相手に不快な思いをさせる行為です。

  1. 恋愛感情から来る交際を迫るもの
  2. 失恋のショックからの脅迫、誹謗中傷
  3. 炎上ややっかみなどなんらかの事情で気に食わない相手に対する誹謗中傷

近年のストーカー規制法の改正によって、電子メールだけでなく、SNSやブログに対する大量送信も規制対象となりましたので、もしも悩んでいるならば警察に相談をしましょう。

掲示板などで誹謗中傷をする

つきまといでは、本人に向けて誹謗中傷をするものですが、掲示板など不特定多数の人が見る可能性の高い場所で、対象者の名誉や社会的信用を傷つけることを指します。

個人情報や性的な嗜好をバラまき暴露する

対象の人物がネット上に書き込んでいることをかき集め、その情報をネット上に拡散させることです。拡散されるおそれがあるものとしては、(名前や住所などの)個人情報、(性的な嗜好など)広められたくない情報が挙げられます。

このような情報がネット上にバラまかれることによって、実生活に強い影響が出ることがあります。住所や顔といった情報がバレたことで、ストーカー被害に発展する可能性がありますし、名前と顔がバレたことによって、所属する学校や会社の評判を下げる可能性もあります。

また、対象者自身のネットリテラシーが低かったのときに書き込んでしまったような知られたくない情報を掘り返され晒し者にされることもあります。

遠隔操作や個人情報の入手を目的としたPCをウイルス感染させる

ニュースで耳にした方も多いと思われますが、他者のPCにコンピュータウイルスを感染させることで、遠隔操作や個人情報の流出を図る犯罪があります。

遠隔操作をされた場合、殺害予告などの容疑者にされてしまうなど濡れ衣を被されるかもしれません。また個人情報の流出によって、どこの誰とも知れない人物にあなたのことが知られてしまう危険性があります。

【参考】

 

なぜネットストーカー行為が行われるのか

一概にはいえませんが、前述したような嫌がらせ行為の主な目的・理由としては恋愛感情・怨恨・いじめ・楽しむためなどが考えられます。

これらは【個人的な想いの要素が強いモノ】と【バッシングやいじめ要素の強いモノ】の2種類に分けることができます。

前者は恋愛感情、怨恨、粘着といったことがきっかけで、後者は相手の不祥事や不適切な言動を理由としたSNS・ブログの炎上がきっかけとしたネットストーカーです。

恋愛感情や怨恨がきっかけの場合

恋愛や遺恨によるネットストーカーをする理由は、かなり個人的な想いが理由になっていると思われます。相手との距離を縮めたい、相手を否定したい・・・。

そういったきっかけからメッセージを執拗に送りつけたり、暴言を吐いたりということになるようです。通常はネット上の被害にとどまりますが、時には傷害行為、殺人といった現実世界での犯罪行為に発展することもあります。

  1. 恋愛感情
    • 交際したい
    • 出会いたい など
  2. 怨恨
    • 相手を否定したい
    • 周囲に事実をバラし精神的、社会的なダメージを負わせたい
    • 殺害したい など

SNSやブログでの炎上がきっかけの場合

ネットストーカーでは炎上したSNSやブログをきっかけに対象者を集団でバッシングする行為がしばしば見られますが、概ね以下のような考えが理由だと思われます。

  • 祭りとして面白がる
  • 相手を非道徳的・悪人として制裁したい

バッシングだけではなく、過去には性行為の画像が流出した女性の個人情報を拡散して盛り上がったりと、ただ単に祭りとして楽しんでいるだけのケースもあります。

 

ネットストーカーで考えられる実被害について

ネットストーカーの被害に遭うと、どういう被害が想定されるでしょうか。

プライバシーの侵害

名前や住所、連絡先、所属団体・顔の画像などの個人情報や知られたくない秘密をネット上にバラまかれることによって、犯罪に巻き込まれたり、辱めを受けたりと、実生活にも問題をきたす可能性があります。

名誉毀損

真偽を問わず、具体的な内容とともに対象者の名前が書き込まれれば、その人物の名誉や社会的信用が下がる可能性があります。

ネットではないリアルなストーカー行為への移行

元々はネットだけでの嫌がらせだったとしても、個人情報が流出したせいで身バレし、自宅や学校に来られたり、意味もなく救急車を呼ばれたりと、ストーカーやいたずらに遭うかもしれません。

容疑者・犯罪者にされる

PCを遠隔操作された結果、他者によって殺人予告やサイバーテロの道具として利用されることがあります。その結果、遠隔操作の被害にあった人が誤認逮捕され、犯罪者扱いを受ける可能性があるのです。

 

ネットストーカー被害の予防・対処について

ネットストーカーの被害に遭わないようにするための予防と遭ってしまったときの対処方法をご紹介いたします。

ネットストーカーの事前予防

ネットストーカーの被害はできれば事前に対策したほうがいいです。できる予防とはどのようなものでしょうか。

個人を特定できる情報を流さない

氏名・住所・顔写真はもちろん、大したことではない情報でもあなたを特定する情報・きっかけになる可能性があります。

特にFacebookのような個人情報が書いてあることが多いSNSをしつつ、Twitterなどで本名を隠した状態でネットのみの知り合いとコミュニティを形成している場合、リアルのあなたに繋がるような情報を書いてしまうとネット上の知り合いに身バレする可能性があります。公開する情報に関して、よく考えてから投稿しましょう。

SNSアカウントを使い分ける&公開範囲を制限する

どこまで情報を出すか、どういう主旨で使うかということを複数のアカウントを持つことで差別化するのも手です。

例えばTwitterをするにしても、【学校の同級生など実生活上の知り合いと関わる用のアカウント】と【ネット上の人と関わる用のアカウント】を2つ用意することが考えられます。アカウントを別々にし、はっきりと住み分けをしておくことで、ネット上での知り合いにリアルな自分の姿を見せないで済みます。

その場合は、互いのアカウントが同一人物であることをわかるようにしてはいけません。女性の方に多いですが、本名を由来とした固定ハンドルネームを使用するのはなるべく控えたほうが良いかもしれません。

またリアル用・ネット用関わらずSNSではロックや公開制限をしておくことで、個人情報の流出を防ぐことができるので、怖いようであればしておいたほうがベターです。

ウイルス対策ソフトを入れる

ウイルス対策ソフトをしっかりと入れておくこと、不審なメールは開かないことで、PCのウイルス感染を防ぐことができます。また不用意にPCやスマートフォンを他の人が立ち入る場所においておかないことです。

知らぬ間に誰かに機器を設置されて、あなたの情報を盗み取られるかもしれません。

ネットストーカー被害に遭った時の対処

ネットストーカーの被害を受けた際にできることはなんでしょうか。

相手からメッセージが来ないような設定にする

つきまといの被害に悩んでいる場合は、相手がコメントやメッセージを自分にしてこないように拒否設定を行うことで対処できます。ただし拒否設定をすることで、相手の怒りを買う危険性もあります。

投稿の削除を申し立てる

誹謗中傷の対処法として、対象のコメントの削除要請を運営に出すこと、しつこい場合は誹謗中傷している人の利用を停止するよう運営に求めることです。

削除の申立てに関しては、対象のサイトにガイドラインがあれば、そのガイドラインの規定に沿って運営側が削除することになるので、申立てをする際にはまずガイドラインに当てはまっているかご覧ください。

ガイドラインの例としてニコニコ動画のコメント削除ガイドラインの一部をご紹介します。

●他人の名誉、社会的信用、プライバシー、肖像権、パブリシティ権、著作権その他の知的財産権、その他の権利を侵害する行為(法令で定めたもの及び判例上認められたもの全てを含む)

●他の利用者への中傷、脅迫、いやがらせに該当する行為

●差別につながる民族・宗教・人種・性別・年齢等に関する表現行為

●自殺、集団自殺、自傷、違法薬物使用、脱法薬物使用等を勧誘・誘発・助長するような行為

引用:ニコニコ コメント削除ガイドライン

ガイドライン中に書かれていることとして誹謗中傷に当てはまることは、上で引用したところですが、見たところある程度の誹謗中傷はカバーしていそうです。

また、誹謗中傷を受けた場合には名誉毀損として刑事や民事で相手を訴えることもできます。

刑事であれば名誉毀損罪で処罰対象とすることが期待できます(しかし刑事処分の最終判断は国が行います。)。他方、民事では被った精神的苦痛に対する損害賠償等を請求することができます。

(名誉毀損)

第二百三十条  公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

引用:刑法

 

ネットストーカー被害について相談できる相談先

警察

ストーカー規制法の適用ができる行為や誹謗中傷の被害に遭っている方は警察に相談をしましょう。そのとき、被害状況の判る証拠が必要ですので、送られてきたメールや誹謗中傷された画面のキャプチャーを撮り印刷したものを用意しておきます。

しかし、ネットストーカー被害の全てを警察にまかせることはできません

例えば無断で撮影された写真や映像をネット上に公開されたとしても、それに当てはまるプライバシー権や肖像権の侵害は民事上の紛争です。警察は民事不介入の原則といって私人間の争いには介入しないので、この場合は警察には頼れません。

警察とネットストーカーに関しては以下の記事も是非ご覧ください。

【関連】
ネットストーカー被害を警察に相談した際の対応と弁護士を頼るべきケース

弁護士に相談

相手の行為が犯罪ではない、もしくは犯罪行為を認めうるだけの証拠がないといった場合、警察は動いてくれません。そのためネットストーカーの被害を受けたときは、刑事告訴できない場合は民事で接近禁止の仮処分や慰謝料請求をしたり、あるいは相手の行為が犯罪であると証明できる証拠を集める必要があります。

警察が動かない場合や裁判を起こす場合、弁護士に依頼することは鉄則であり、お金こそかかってしまいますが、問題解決のための助けになってくれます。

弁護士に相談・依頼に係る費用

弁護士にかかる費用は事務所やケースによってまちまちですが、概ね以下のような相場になっています。

  • 名誉毀損で刑事告訴をする場合→10万円~50万円
  • 民事訴訟をする場合→20万円~50万円
  • 接近禁止命令の申立て→10万円~30万円

 

ネットストーカーを取りしまるストーカー規制法について

ストーカー規制法は、桶川ストーカー殺人事件がきっかけとなり、2000年11月に施行されました。その後、時代の流れとともに2度の改正をしています。

ストーカー規制法で規制できる行為・対象

ストーカー規制法の対象行為
つきまとい 待ち伏せ 押しかけ うろつき 尾行したり、学校や職場に押しかけたり、付近をうろついたり、見張りをすること
監視していると告げる行為 監視していることや監視していることを示唆することを伝える行為
面会や交際の要求 面会、交際、復縁などの被害者に義務のないことやプレゼントを受け取ることを求める行為
乱暴な言動 「死ね」などの暴言を言ったり、メールを送ったりする行為
無言電話 連続した電話 ファクシミリ 電子メール SNS等 無言電話や拒否しても電話やメール、FAX、SNSで連絡してくる
汚物などの送付 汚物などの人に不快感を与えるようなものを送りつけてくる行為
名誉を傷つける 口頭やメールで誹謗中傷する
性的羞恥心の侵害 猥褻な写真などを送ったり、性的な言動を告げること

参考:警視庁 ストーカー規制法

表中の電子メールやSNSの連続送信ははじめから対象行為にあったわけでなく、前述の改正によって追加されたものです。今回は2度目の改正で従来からどう変わったのかをご紹介します。

2度目の改正でストーカー規制法はどう変わったのか

従来のストーカー規制法と2度目の改正後では具体的にどこが変わったのか、以下の表をご覧ください。

改正の対象 従来のストーカー規制法 2度目のストーカー規制法改正後
罰金 懲役6ヶ月以下・罰金50万円以下 懲役1年以下・罰金100万円以下
禁止命令違反の罰則 懲役1年以下・罰金100万円以下 懲役2年以下・罰金200万円以下
禁止命令が出されていない時 親告罪 非親告罪
禁止命令 事前警告必要 事前警告なしで禁止命令発令可能

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。

最後にこの記事のまとめをさせていただきます。

  1. ネットストーカーといえる行為とは・・・
    ・つきまとい
    ・誹謗中傷
    ・個人情報や性的嗜好の暴露
    ・PCやスマホをウイルス感染させ遠隔操作や個人情報の取得
    ・プライバシー侵害
    ・名誉毀損
    ・物理的なストーカー行為へ移行
    ・PCを操作され犯罪者に仕立て上げられる
  2. ネットストーカーには、恋愛感情や恨みなどの個人的な感情という要素が強いモノと集団リンチ的な要素の強いモノの2つがある
  3. ストーカー規制法の規制対象やその他刑法に触れるものは警察へ相談する
  4. 裁判を起こしたり、接近禁止の仮処分を出してもらうために弁護士へ依頼する

記事をお読み頂き、ありがとうございました。