架空請求詐欺の手口と対処法|事前対策と予防方法

架空請求(かくうせいきゅう)とは、利用した覚えのない利用料金や退会料を請求する詐欺の手口で、振り込め詐欺の一種です。

架空請求詐欺のトラブルについては独立行政法人国民生活センターにも寄せられており、以下のような事例が確認されています。

  • 「個人情報削除依頼を受けて連絡した。連絡いただけないと利用料金が発生する」というメールが届いた。
  • 夫のスマートフォンに大手通販サイトから「未納料金がある。今日中に電話がほしい」とのメールがあり、電話をしたら40万円の請求を受けた。
  • デジタルコンテンツ事業者から未納料金があるというメッセージが届き、電話すると約20万円を請求された。指示に従ってコンビニで購入したプリペイド型電子マネーの番号を伝えたが、翌日に約47万円を追加請求された。インターネットで調べた相談窓口に相談すると、調査料として約8万円を請求された。

引用:独立行政法人国民生活センター

警察庁が公開している平成28年度の表によると、架空請求詐欺は3743件、被害額は158.3億円もの金額にのぼるとのこと。

振り込め詐欺全体では被害額が375億円ということですから、上記の事例のような被害に遭われている方がたくさんいることがわかります。

人の弱みにつけこんで金銭をむしり取る「架空請求」。こちらの記事では、①どのような手口で架空請求が行われるのか、そして②どう対処すればいいのかについてご紹介します。

架空請求業者のアプローチの方法

架空請求をしてくる方法は(アダルトサイトや出会い系サイト等の)WEBサイトメール、そして裁判所の手続きを悪用する手口があります。

以下ではこれらの3つの方法についてご紹介します。

WEBサイトのアクセスを利用した架空請求

アダルトサイトにアクセスしたり、サイト内の動画再生ボタンをクリックしたり、アダルトサイトのリンクをいくつかぴょんぴょんと踏んだりしていると、請求画面がでてくることがあります。

近年ではゲームのアプリをインストールしたことによって架空請求の被害に遭うパターンもあるとのこと。

これらはワンクリック詐欺ツークリック詐欺と呼ばれるもので、一方的に会員登録に同意したことにされ、登録費用や利用料、退会料などという名目で金銭の支払を要求してきます。

請求画面に記載されていることは、おおむね以下のようなものです。

  • 請求金額
  • 支払期日
  • 端末情報(IPアドレスなど)
  • 登録完了、18歳以上確認済みなどあなたが同意したかのような文言

これらの情報はただの脅しですが、慣れない人にとっては怖いものなのです。

ワンクリックウェアに感染させる

ケースによってはワンクリックウェアという悪意あるソフトウェアに感染させられてしまうこともあります。

ワンクリックウェアにはさまざまな種類があって、ネットバンキングのログインに必要な情報を抜き取り不正利用したり、PCを動かなくさせ回復のためと称して金銭を要求したり、請求画面を消しても消しても出現するようにしたりと、重篤な被害を負わせてきます。

このような被害に遭わないためにも普段から最新のセキュリティソフトを入れておくべきで、感染してしまってからはノートンやウイルスバスターでも回復が難しいのが現状です。

感染してからの回復方法は、ネット上で手に入れられる「ワンクリックウェア駆除ツール」を使用したり、メーカーに修理を出すことが考えられます。

メールによる架空請求

メールの送信によって架空請求を行なってくるケースもあります。

送り主はサイト運営会社と公的な文書を装った2パターンがあり、前者に関してはWEBサイトの場合と大きな違いはありません。

公的な文書を装っているケースに関しては、消費者に対して「訴訟」と「支払」を天秤にかけせる方法がとられ、「訴訟を起こす」という脅しをかけつつ、金銭を期日までに支払えば訴えを取り下げるなどという文言が書かれています。

メールからのワンクリック詐欺もある

メールに記載されているURLをクリックすることでワンクリック詐欺サイトにアクセスしてしまうことがあります。

WEBのところで説明したことと同じで、請求額、支払期日、端末情報などが書かれた請求画面が現れるのです。

裁判所の手続きを利用した架空請求

正式な手続きである「督促手続」※1「少額訴訟手続き」※2を悪用した架空請求詐欺があります。

この2つの制度に共通することは、手続きによって届いた書類(支払督促、少額訴訟の呼出状)を放置して対応しなかった場合、支払に応じなければいけない可能性がでてくるというところです。

したがってこれらの制度を利用した書類が送られてきたら、それが本物であれば対応しないといけないのです。

詳しくはワンクリック詐欺の法的正当性と裁判を起こされた場合の対処法をご覧ください。

※1督促手続きは簡易裁判所を通して行う制度で、本来は家賃や給料や立替金など、契約上の未払い、未返還に対して利用するもの。

※2少額訴訟手続きは同じく簡易裁判所で行う制度で、交通事故などのトラブルが起きた際の60万円以下の請求をする場合に利用できるもの。

架空請求への対処方法

請求画面が現れるなど、架空請求の被害に遭いそうになったときはなにをすればいいのか、見ていきましょう。

無視する(WEBサイト、メール)

架空請求は消費者側が連絡をしない限り(裁判所の手続きの利用以外)は進行しない詐欺なので、いくらそれらしい請求画面が現れても無視してしまって結構です。(ただし裁判所から督促状や少額訴訟の呼出状が送られてきた場合は無視してはいけません)

契約は無効である

法的に契約は成立していないのか?払わなくて大丈夫か?と思われる方もいるでしょうけれど、大丈夫です。契約は成立していません。

ワンクリック詐欺の請求の場合、当該申込と承諾が成立していない場合がほとんどと思われます。また、仮に申込みと承諾が合致していても、

  • 有料サービスであることを知らなかった
  • 料金が高額であることを知らなかった
  • サービス内容を知らなかった

といった錯誤による無効主張が可能な場合がほとんどです(電子取引については、電子消費者契約法第3条で錯誤要件が緩和されています。)。

つまり、事前にサービスの内容や対価の説明もない状態で、単にクリックしただけでは、契約が有効に成立しないのです。

相手に連絡をしない(WEBサイト、メール、裁判手続きの悪用)

請求画面には詐欺業者の連絡先が記載されていることがありますが、連絡をしてしまうと相手に電話番号やメールアドレスが伝わってしまうのでやめましょう。「相談窓口の電話番号」として相手の方から消費者の逃げ道を用意してくれているようなパターンがありますが、ただの罠であって結局は支払わせる方向に持っていきます。

また裁判所から書類が届く場合は無視しないようにと繰り返しお伝えしましたが、偽物である可能性もあります。

書類に記載されている電話番号に連絡などをするのは危険ですので、裁判所のWEBサイトで公表されている連絡先を確認したり、国民生活センターや消費生活センターで本物の書類かどうか確認しましょう。

メールは削除する&メールの添付ファイルは開かない(メール)

覚えのない送り主から怪しいメールが送られてきた場合は開かずに削除してしまいましょう。

またそのメールに添付されているファイルを開いてしまうとウイルスやマルウェアに感染して厄介なことになりますので、開かずにメールごと消してください。

東京くらしWEBに掲載されてないか確認する(WEBサイト、メール)

東京都の情報サイト「東京くらしWEB」では情報に基づき市民からの情報提供を受けて「架空請求業者」と「架空請求サイト」を公開しています。

もしも怪しげな事業者名を名乗ってこられたら、こちらのページを確認するのもいいでしょう。

ただし注意点として、架空請求業者は実在する会社に類似した名前を使用していることもよくあるので、これまでご紹介したポイントから判断し、不安であれば国民生活センターや弁護士事務所の無料相談を利用することも検討してください。

誰かに相談する(WEBサイト、メール、裁判手続きの悪用)

裁判所の手続きを利用したものでないかぎりは無視でいいのですが、どうしても不安であるなら誰かに相談しましょう。

ご家族でもいいですし、友達や同僚、上司でもいいです。1人で悩んだ結果支払ってしまうではなく、その前に誰かを挟むことで冷静になれることもありますから。

また消費生活センターや弁護士に相談することで今後の指針や問題解決に向けて動くことができます。

相談先

国民生活センターと消費生活センター

国民生活センターと消費生活センターは、消費者トラブルの際の相談を聞いてもらえる機関です。

特に裁判所名義で書類が届いたときに、それが本物の督促状や呼出状なのか?対応しなければならないのか?という確認もしてもらえます。

法テラス

法テラスは法的トラブルに見舞われたときに解決のための法律の情報を教えてくれる機関です。

ケースに応じた法制度や相談先を教えてくれるので、架空請求についても悩んでいるなら連絡してみましょう。

警察

多くの人が報告し警察が認知することで、犯罪行為の撲滅に繋がります。

特殊詐欺に悩んだら#9110に電話をかけよう

不特定多数の人々に直接会わずにお金を騙す詐欺のことを総称して特殊詐欺といいますが、そのようなときは#9110で警察に連絡をしましょう。

こちらの番号は、犯罪被害を未然に防止するための回線ですので、振り込む前に連絡しましょう。

また各地域の警察の連絡先はこちらに記載されています。

参考:全国の警察相談窓口

まとめ

いかがでしたでしょうか。

最後に架空請求の被害に遭いそうなときにすべきことを改めて確認しましょう。

  • 請求画面、請求メールに関しては無視を徹底。連絡してしまうと個人情報を知られてしまうので面白半分でもNG。
  • ワンクリックウェアの感染を防ぐためにも日頃から最新のセキュリティソフトを導入しておく。
  • 裁判所から書類が来たら対応すること。ただし偽物の書類の可能性もあるので、記載された連絡先には要注意。
  • 迷ったら国民生活センター、消費生活センター、法テラス、警察に相談すること。

以上、記事をお読みいただきありがとうございました。