架空請求とは、全く身に覚えのない請求がメールや郵便などで送られてくる又は、電話がかかって来てお金を騙し取る詐欺です。
送られてくる文面には下のチェックリストのような特徴があります。送られてきた文面は一見正当な内容に見えるのですが、細かいところを検証すると矛盾や不審な点が見えます。
しかし、期限が決めてあったり、早く払わないと大変なことになるのではないのかという不安を煽られ、文面の不信感を読み取れず、電話を掛けてしまったり、料金を支払ってしまうのです。
また、電話の会話内容にも矛盾点があるにも関わらず、正当化されているかのように話されるため、冷静な判断が取れず、騙されてしまいます。
実際に、架空請求はいまだに多くの人が被害にあっており、警視庁の調べでは平成28年の架空請求の被害金額は14億3,150万円で、被害者の年齢別の認知件数は下の図のようになっています。
基本的に被害者は女性の割合が多く、男性の認知件数は低いです。図の表から年齢、性別関係なく被害にあう可能性があるのが分かります。
架空請求の対処として、基本的には無視で大丈夫なのですが、ここでは、架空請求業者を撃退したいと思う人が、相手の矛盾を判断するために必要な知識や裁判所から手紙が届いた場合の対処法、架空請求で困った時の相談先を紹介します。
架空請求業者を撃退するための4つの知識
架空請求業者から請求が来た時に慌てて支払ってしまうのは最悪のケースです。架空請求業者からの請求にも、しっかりした知識があれば撃退することができます。ここでは架空請求された時、撃退するために知っておいてほしい4つの知識を紹介します。
債権回収業者や代行業者と言われた・記載されていた場合に確認するべきこと
債権(ここでは支払っていないお金)を回収する業者、又は代行業者と言われたり、記載されている場合があります。しかし、債権回収は基本的に本人か弁護士以外が行うことは認められておらず、例外として法務省が許可した会社のみ債権回収業を行うことができます。
これは、「債権管理回収業に関する特別措置法」の第2章営業の許可で定められており、許可がないのに営業している場合は違反していることになるのです。
法務省のHPには、債権回収を許可した会社の一覧を発表しているので、債権回収業者又は代行業者と言われたら名前を聞き、こちらの「債権管理回収業の営業を許可した株式会社一覧|法務省」から確認しましょう。ここに名前がない時点で、違法な会社になります。
メールやただの郵便・電話には法的な効力がない
メールやただ郵便や電話にはこちらに請求が確実に届いたという証明ができないため、どんなに「これが最終通告です。」と言われていても、法的な効力を持っていません。また、公的な書類場合、下記の記載がなくてはいけません。
- 業者名
- 部署名
- 担当者名
- 代表者名
- 所在地
- 電話番号
- 請求する場合は、いつ・どこで・何の請求か
真正な請求の意思がある場合、上記内容を明らかにした「内容証明郵便」を送付するのが通常の対応と思われます。
相手が単に口頭で「最終通告である」「法的効力がある。」と言っていたとしてもこれを鵜呑みにせず、「では具体的な内容を書面で送付してください。それを見て検討します。」と対応するのが良いでしょう。
口座凍結の手続き
郵便やメール又は電話で話したときに口座の番号を聞くことができたら、警察に相談しましょう。警察は相談のあった口座が特殊詐欺に使用されていると判断した場合、管理者である銀行に通知して口座凍結の措置(入出金ができないような措置)を求めることがあります。
これを行うことで、犯人はお金を引き出すことができなくなり、被害を抑えることができます。上記の通り実際の凍結処理は銀行が手続きを行います。なので、被害者側がすることは、架空請求されていることの説明と口座番号を警察に伝えることです。
契約の法的効力の発生要件を知っておく
架空業者とした身に覚えのない契約は、そもそも有効に成立していないものです。契約は申込みと承諾が合致して初めて有効に成立しますが、架空請求の場合、有効な申込みや承諾がないことがほとんどです。
したがって、請求業者から請求が来たとしても、法的に支払義務がないことがほとんどですので、落ち着いて対処しましょう。
架空請求でも無視してはいけない裁判所からの郵便
架空請求は無視が基本ですが、裁判所から郵便が届いた場合は絶対に無視してはいけません。
ここでは郵便局から郵便が届いた場合になぜ無視してはいけないのか、裁判所はなぜ架空請求業者の書類を受理するのかをまとめました。
裁判所からの郵便をなぜ無視してはいけないのか
どんな裁判でも裁判を行うにあたり、相手側が来なかったら裁判ができずに困ってしまいます。裁判手続では、訴状は法的な根拠がなくても提出可能である一方、被告が訴状に対して何ら答弁せず、期日に出頭もしない場合は訴状の内容通りの判決を出します。
そのため、取引や債務負担の事実がなくても、訴えられた側が訴状を無視して出頭しなかった場合、訴状通りの請求が裁判所に認められてしまうのです。
そして料金の未払いが認められたら、強制的に財産を差し押さえられてしまう可能性があるので、裁判所からの通知は絶対に無視してはいけません。
何故裁判所は架空請求業者の郵便でも送るのか
裁判所は書類の内容だけでは、架空請求かどうかの判断ができません。本当に料金の未払いで業者が困っているケースもあり得るのです。また書類はよほどの不備がない限り受理されます。
裁判所から郵便物が送られてきた場合の対処法
送られてきた場合どのような対処をすればよいのか紹介します。大まかな流れを分かりやすく図にまとめたのでご覧ください。
(参考:督促手続・少額訴訟手続を悪用した架空請求にご注意ください|法務省)
それでは細かく流れを確認しましょう。
裁判所から郵便の郵便形態を確認する
ここで確認してほしいのは、届いた書類が特別送達という郵便形態で送られてきているということです。特別送達とは裁判所からの郵便物で、受けとったことを証明する郵便になります。見分け方は簡単で、特別送達の場合郵便物の表面に「特別送達」と記載されています。
差出人の裁判所が実在しているか確認する
差出人の裁判所の電話番号が実在している裁判所の電話番号と一致しているか、電話帳や国民生活センター又は最高裁判所のHP(各地の裁判所)から確認しましょう。
そのうえで、本当の裁判所の連絡先に連絡し、自分の裁判にに対して裁判所の手続きが進められているのか、本当の裁判所から通知を出したか確認する必要があります。
また、郵便物の連絡先に連絡してしまうと個人情報を知られてしまう恐れがあるので注意しましょう。
実在していなかった場合と実在していた場合の対処法
実在していなかった場合
実在していなかった場合は裁判やその他手続きが全て事実ではないため、何か手続する必要はありません。不安な場合は国民生活センターや弁護士に相談しましょう。
実在していた場合|支払督促
無視してしまうと強制的に財産を差し押さえられてしまう可能性があります。受け取った2週間以内に裁判所に対して「督促異議の申立て」を行わなければなりません。
実在していた場合|少額訴訟手続
少額訴訟手続きの書類には、裁判の日程が記載されています。そのため、無視して出頭しない場合は相手の主張を認めたことになり、裁判に負けたことになり、身に覚えのない未払い料金を支払わなくてはいけなくなるのです。
少額訴訟手続きの場合は指定された日時に裁判所に出頭し、その日に合わせ「答弁書」というものを裁判所に提出しなければなりません。
架空請求された際の相談先
架空請求された時だれに相談しますか?目的に沿って相談する機関を選びましょう。
警察
架空請求の電話でお金を手渡しで持ってこいなどと言われた場合は、警察に連絡し対処してもらうことで現行犯逮捕してもらえる可能性が高くなります。
架空請求の詐欺や、そのような不安の相談をする際は110番ではなく#9110番に連絡しましょう。
国民生活センター(消費者センター)
国民生活センターでは、架空請求に合ったけれど、どのように対処すればいいのかまったくわからないという場合におすすめです。相談は無料で利用でき、弁護士に相談したいとなった場合には、予約をしてくれる場合もあります。
弁護士
裁判所から、郵便物が届いた際には特に弁護士に相談するのをおすすめします。また、法的に架空請求が有効になってしまうのか無効になるのかも相談できるので、まずは無料相談を利用するのも1つの方法です。
まとめ
いかがでしょうか。
架空請求は落ち着いて対処すれば、矛盾したところが多く出てくるので、どのような請求でも対処することが可能です。また、あまり遊び半分で煽るのは危険なので、早めに各機関に相談しましょう。