離婚協議書(りこんきょうぎしょ)とは、離婚時の話し合い(慰謝料、財産分与、親権・養育費など)で合意した内容を記載しておく書面のことを言い、後々、話し合いの内容について争いが生じた場合に、証拠として用いられます。
約束を守らせる誓約書とは違い、離婚する際の話し合いの内容を記載するものとなりますが、離婚協議書を公正証書にする事で、もし約束を破った場合に強制執行を行う事が可能になるのです。
離婚協議書は言ってしまえばただの紙ですが、離婚協議書があることで相手に決まり事を守らせることのできる便利な書面です。今回は何かと難しいイメージがある離婚協議書の書き方とその効力を絶対のものにできる公正証書にする手順など、法律知識が全くない方でも自分で書けるようになる方法をご紹介していきます。
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離婚協議書の書き方と文例
まずは離婚協議書の書き方からご紹介して行きます。離婚協議書の作成方法ですが、以下のような手順で進めていただくと良いでしょう。
- 1:相手と話し合い離婚内容を決める
- 2:話し合った内容を離婚協議書にまとめる
- 3:離婚協議書を公正証書にしてもらう
公正証書は公正役場で作成するものですので、離婚協議書を作って持って行く必要があります。
離婚協議書のひな形(フォーマット・文例)のダウンロード
離婚協議書に決まった書き方やフォーマットがあるワケではありませんが、一応ひな形を用意しましたので、1から考えるのは何かと大変かと思いますので、ご活用頂ければ幸いです。
これから話す内容を穴埋め形式で作成してありますので、そのまま埋めて頂くだけで使用可能です。
離婚する際の内容を決める
まずは、離婚内容を決めていくことになりますが、話し合う内容は主に以下のようなものになるでしょう。
- 離婚に合意した旨
- 親権者の指定について
- 養育費の支払い
- 慰謝料について
- 財産分与について
- 子供との面接交渉について
- 年金分割について
- 公正証書にするか否か
- 清算条項について
話し合った内容を離婚協議書にまとめる
1:離婚に合意した旨
夫婦が離婚に合意していることを記載します。
その際、「離婚届の提出日」「誰が離婚届けを役所に提出するか」などを記載するケースもあります。
2:親権者の指定について
子供の名前を記載しますが、場合によっては子供の名前の前に「長男」「長女」などの記載をすることもあります。
3:養育費の支払い
養育費には「衣食住に必要な経費や教育費」「医療費」「最低限度の文化費」「娯楽費」「交通費」など、子どもが自立するまでのすべての費用が含まれます。
離婚協議書では、
- そもそも養育費を支払うのか
- 支払うならその金額はいくらか
- 支払い期限はいつからいつまでか
- 養育費の支払い方法(短期間集中型か長期月額支払うか)
なども決めて記載しておくのが良いでしょう。
4:慰謝料について
- 慰謝料はそもそも支払うのか
- 支払い金額はいくらにするか
- 支払うなら期日はいつまでか
- 支払い方法は一回払いか、複数回払いか
- 振込手数料はどちらがもつか
などを決めて記載します。
5:財産分与について
財産分与とは、婚姻生活中に夫婦が協力して築き上げた財産をそれぞれの貢献度に応じて個人に分配することをいいます。
- 財産分与の対象となる財産はなにか
- 財産分与として譲り渡すものは何か
- 財産分与の支払いはいつまでにするか
- 一括で支払うか、複数回で支払うか
などを記載します。
6:子供との面会交流について
面会交流とは、離婚したことで子供と離れて暮らす親が、定期的に子供と会い、交流することを言います。
- どの程度の頻度で面会交流するか
(例)月1回の頻度、年2回の1泊程度の宿泊など - 面会交流の日時
- 1回あたりの面会交流の時間
- 面会交流の方法や取り決め
- 普段の連絡の可否
などを記載します。
7:年金分割について
年金分割とは、婚姻期間中に支払った保険料は夫婦が共同で納めたものとして計算する制度です。専業主婦の場合、夫が支払った保険料の一部(最大50%)を妻が払ったものとして、将来の年金額が計算されます。
8:公正証書にするか否か
度々登場する公正証書ですが、公証人が法律に従って作成する公文書のことで、高い証明力があり、養育費などの支払を怠ると裁判所の判決などを待たず強制執行手続きに移ることができます。つまり強制的に養育費などを回収できるということですね。
9:清算条項について
清算条項とは、離婚などの際に決定された請求権以外の支払いが、お互いに一切生じないことを確認する文言のことで、「離婚協議書に記載のないものは一切払いません」という宣言を、お互いが認める一文だとお考えください。
離婚協議書を公正証書にしてもらう
最後に、離婚協議書を公正役場に持って公正証書にしてもらい、完了です。
離婚協議書を公正証書にするメリット
慰謝料や養育費の支払など金銭の支払いを約束していた場合、もし相手の支払いが滞って支払をしない時には、裁判を起して裁判所の判決を得なければ強制執行をすることができませんが、公正証書があればすぐに強制的な回収をする手続きができますので、ぜひともおすすめしたい手段ではあります。
公正証書にするメリット
高い証拠能力と執行力がある
確実に支払うという証拠がないと言い逃れの可能性が高くなりますし、離婚協議書だけでは後から偽造することも不可能ではありません。証拠とは「事実に基づく確実なもの」である必要があるので、離婚協議書だけではなく、公正証書にすることで、証拠としての価値が確実なものになります。
強制執行が可能
強制執行は強制的に給料や預金などを差押える行為です。慰謝料や養育費の意図的な支払い拒否などがあると裁判費用と手間(時間)をかけずに金銭を回収することが可能になります。他にも、子供との接触禁止などで2度と近づけないような処置を行う事も可能です
内容に疑う余地がない
公正証書は公証人が作成します。公証人は法律のプロです。そのため、素人の目よりも内容が正確で確実性が高まります。
公正証書のデメリット
作成に費用がかかる
公正証書の作成費用は、原則として目的物の価格によって決められています。目的物の価格とはその行為によって受け取るまたは支払わなければばらない金銭的負担のことです。
法律行為に係る証書作成の手数料
目的の価額 | 手数料 |
100万円以下 | 5000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 17000円 |
1000万円を超え3000万円以下 | 23000円 |
3000万円を超え5000万円以下 | 29000円 |
5000万円を超え1億円以下 | 43000円 |
1億円を超え3億円以下 | 4万3000円に5000万円毎ごとに、 1万3000円を加算 |
3億円を超え10億円以下 | 9万5000円に5000万円毎ごとに、 1万1000円を加算 |
10億円を超える場合 | 24万9000円に5000万円毎ごとに、 8000円を加算 |
作成に時間がかかる
公正証書作成には、公証役場によりますが一般的に2~3週間かかるといわれています。また公証役場へは平日の9~17時に夫婦揃って出頭しなければならないため、仕事をしながらでは予定の調整が難しく時間がかかってしまいます。
公正証書にも種類がある
公正証書には、以下のようなものがあります。
- 離婚に伴う慰謝料に関する公正証書(離婚給付契約公正証書)
- 離婚に伴う子供の養育費の支払に関する公正証書
- 遺言公正証書
- 任意後見契約公正証書
- 金銭の貸借に関する契約
- 土地・建物などの賃貸借に関する公正証書
- 事実実験に関する公正証書
どれを選ぶべきか悩む場合もあるかと思いますが、そのあたりは公証人に任せておけば問題ありません。
離婚協議書を公正証書にする手順
公正役場に行く前に準備するもの
公正証書は公証役場で作成してもらいます。原則として夫婦一緒に公証役場に行く必要があります。
- 離婚協議書
- 戸籍謄本
- 印鑑証明/実印
- 身分証明ができる物
- 不動産の登記簿謄本・物件目録など
- 年金手帳と年金分割のための情報通知書
公正証書作成に必要な書類
- 夫婦それぞれの印鑑登録証明書
- 運転免許証又は住民基本台帳カード(顔写真入)
- 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明)
- 離婚事実の記載された戸籍謄本(離婚届提出済みの場合)
- 届出済証明書類
- 財産分与の対象財産を特定するための資料(財産分与がある場合)
- 年金手帳及び年金分割のための情報通知書(年金分割関係の条項を設ける場合)
公証人と面談
あらかじめ日時を予約した上で「簡単なメモ」と「必要な書類・資料等」を持参してください。公証人が合意内容に従って公正証書の〝原案″を作成し、後日お二人に公正証書の〝原案″の内容確認をしていただきます。
作成当日の手続き
公正証書案の内容の最終確認は夫婦の2人にしてもらいます。持ち物は印鑑、印鑑登録証明書を提出された方は実印、運転免許証の写しを提出された方は認印を持って行きましょう。
まとめ
今回は離婚協議書と公正証書について書いてきましたが、何事もやり取りを残しておく証拠が最後に物を言う事です。相手が約束を守らないなんて思いたくはないでしょうが、こういった地道な活動が、あなたも身を守る事に繋がります。是非、参考にしてみてはいかがでしょうか。
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